保育士の仕事&キャリア
2024.09.24 更新
保育の現場で役立つ!保育士のための感染症予防ガイド-後編
保育園で予防や対策が大切になる主な感染症について予防と対策を紹介していくシリーズ。前編では溶連菌感染症、はしか、風疹、水ぼうそうの四つの感染症についてまとめました。続く後編では、近年話題にもあがったものなどを含め、代表的な感染症を4つ紹介していきます。
ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは、ウィルスを原因とした乳幼児が感染しやすい感染症の一つです。初夏に流行しやすく、ウィルスの型の多さから、シーズン中に何度も感染してしまうケースがあるのも特徴の一つです。
潜伏期間
2~4日
症状
のどの痛み、のどの腫れ、のどの水疱、39度以上の高熱
対処・予防
主な感染ルートは、感染者の咳や鼻水、便から排出されるウイルスです。アルコール消毒に抵抗があるので、感染予防は石鹸でのこまめな手洗いが有効です。
夏風邪を代表する感染症のひとつで、高熱と喉の強い痛みが特徴です。喉が痛くて食べるのを嫌がったり、吐いてしまう子もおり、脱水症状に陥らないように気をつけることが大切です。飲み物を嫌がる場合は、無理に飲ませずに少しずつ飲ませましょう。
ヘルパンギーナは、インフルエンザのように「感染したら〇日間保育園を休む」という決まりがありません。症状がおさまっても一定期間ウィルスを排出するため、保育園によっては出席停止期間を設けています。
手足口病
手足口病は春から夏、特に7月に感染数が最大となるウイルス感染症です。感染力が高く、感染者が出ると保育園内に広まっていく恐れがあります。
名前の通り、手のひらや足の裏に発疹が表れたり、口の中にも水疱ができるのが特徴です。口の中が痛いので飲み物を嫌がる子どももいるため、夏場には脱水症状を警戒してください。
手足口病は多くのウイルスの型があるため、何度も感染するリスクがあります。エンテロウイルスに感染したケースでは無菌性髄膜炎に感染する可能性もあるため注意してください。
潜伏期間
3~6日
症状
手・足・口の中に水疱状の発疹、口内の水ぶくれによる痛み、発熱
対処・予防
手足口病の疑いがある場合、タオルや食器の共用をしないように徹底し別室に移動させて休ませるようにしましょう。
咳や鼻水、便に排出されるウイルスから感染が拡がります。潜伏期間があり、症状がおさまっても4週間ほどは便からウイルスが排出されるため、保育園での感染拡大がおきやすい病気です。
インフルエンザのように「〇日間保育園を休む」という明確な指標はなく、出席停止になることはありません。安静にしていると数日中に治ることが多く、発熱や水疱の影響がなく普段の食事がとれて元気になれば登園再開となります。
咽頭結膜熱(プール熱)
咽頭結膜熱、通称プール熱は例年6月頃から流行し始め、7・8月にピークがある感染症です。アデノウイルスにより、発熱、のどの痛み、結膜炎といった症状が出ます。真夏に多く、プールでの接触やタオルの共用で感染することもありプール熱と呼ばれましたが、近年ではプール利用での集団感染はみられなくなってきました。
潜伏期間
2~14日
症状
喉の痛み、目の充血、結膜炎、腹痛、咳、鼻水、39度以上の高熱
対処・予防
アデノウイルスにはアルコール消毒が効きにくいため、予防策としてタオルなどの共用を避け、石鹸と流水での手洗いを徹底します。
咽頭結膜熱(プール熱)では発熱と喉の痛み、結膜炎などが主な症状ですが、アデノウイルスでは、「はやり目」と呼ばれる流行性角結膜炎や、呼吸器感染症を起こすこともあります。
目やにや目の充血がみられないか意識すると早期発見につながります。
アデノウイルスによる感染症のうち、咽頭結膜熱(プール熱)、流行性角結膜炎、胃腸炎は主な症状が無くなってから2日経つと登園できるようになります。非常に感染力が強いウイルスなので、保護者に事前に周知し、協力をあおぐことが大切です。
ヒトメタニューモウィルス感染症
ヒトメタニューモウィルスは、RSウイルスと似た呼吸器症状で近年話題となった感染症の一つです。3~6月に感染者が増加し、5歳までに70%が感染すると言われています。
1度感染しても免疫が獲得できないので、比較的感染しやすいウイルスです。飛沫感染、接触感染で感染が広がるため、通年で対策が必要な感染症です。
潜伏期間
3~5日
症状
高熱、咳、鼻水
対処・予防
予防策は、飛沫・接触感染で拡がるため手洗いの励行、マスクの着用などです。保育園では、おもちゃや共用部分の消毒が有効です。
ヒトメタニューモウィルス感染症の主な症状は、咳・光熱・鼻水です。重症化すると気管支炎や肺炎をおこすことがあるので、1週間以上熱や咳が続く、喘鳴、呼吸困難などがみられた場合は早めの受診が必用です。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
流行性耳下腺炎、通称おたふくかぜはムンプスウイルスの感染によるものです。耳・あごの下の腫れや高熱が主な症状で、感染するのは殆どが小児から小学校低学年までです。
年間を通して感染リスクがあるおたふくかぜですが、入園シーズンとなる春から夏は集団感染のリスクが跳ね上がるため警戒しましょう。
潜伏期間
14~21日
症状
あごや耳の下が腫れる、発熱
対処・予防
おたふくかぜの主な感染経路は飛沫感染や接触感染です。ムンプスウイルスの感染力は非常に高く、耳下腺が腫れる数日前からウイルスが排出されます。また、感染しても症状があらわれない不顕性感染も多く、集団で生活する保育園ではどうしても感染が拡がりやすくなります。
学校保健安全法により、腫れが出てから5日が経過し全身状態が良好になるまで保育園への登園はできないと定められています。少なくも発症から5日間は出席停止ということになります。
おたふくかぜは、任意接種の予防接種により約90%感染リスクを減らすことができます。保育園での感染を心配する保護者の方にとって、ワクチン接種も選択肢のひとつです。
まとめ
保育園児によくある9つの感染症について、症状や予防、対処についてお伝えしてきました。潜伏期間や症状が治まった後の感染リスクがあることを考えると、保育園における感染対策は「通常業務」として位置づけられるべきものであることがわかります。。
感染症対策の基本的な心構えを整理するなら以下の4つでしょうか。
・手洗いうがいの大切さを園児たちに伝え、習慣づける
・タオルや食器は共用しない
・共用スペースやおもちゃはこまめに消毒
・予防接種で防げる感染症は、保護者に接種をしっかりと呼びかける
これらを意識することで、日常的な感染症から子どもたちを守ることができます。保育士が正しい知識を持ち、毎日の感染対策を行うことで、保育者にとっても園児にとっても安全・安心な保育を実現しましょう。
参考)キッズドクターマガジン
https://kids-doctor.jp/magazine
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