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保育士の仕事&キャリア

2024.07.16 更新

保育士として知っておきたい法改正とその影響とは?処遇改善編

平成25年度以降、国の施策により累計で23%の給与改善や月額最大4万円の加算などで保育士の待遇改善、給料アップが実施されています。

一方で、制度が複雑でわかりづらく「自分のお給料はどうなっているの?」と疑問に思っている方も多いのではないでしょうか。

 

令和5年12月に策定された「こども大綱」では、「処遇改善加算」の簡素化・一本化の方針が示されています。実際の手続きは保育園の運営者が行うことになりますが、保育士の処遇改善に向けた法律や制度についてわかりやすくお伝えします。

参考)公定価格の処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲ の一本化について

 

保育士の処遇改善手当とは

保育士の処遇改善手当は、保育士の給料を引き上げることを目的とした補助金制度です。正式な名称は「処遇改善加算」ですが、一般的には「処遇改善手当」と呼ばれています。

 

条件に該当する職員がいる場合、市町村を通じて保育園の運営者が申請を行い、園を通じて保育士や職員に分配される仕組みです。

 

処遇改善手当には、以下の3つのポイントがあります。

 

・対象は認可保育園のみ

・補助金を受け取るためには、保育園が受給手続きをする必要がある

(認可保育園であっても、申請していなければ対象外)

・処遇改善手当は基本給とは別で支給

 

勤務している保育園から処遇改善手当が支給されている場合、多くは給与明細に「処遇改善手当」として明記されます。園によってはボーナス時に支給したり、一時金として支給するケースもあるようです。

 

法改正の背景

少子化や共働き家庭の増加に伴い、保育士の需要が高まる一方で、保育士不足が深刻な課題となってきました。保育士の収入が平均よりも低いことが要因のひとつと考えられることから、処遇改善手当の導入が決定されました。

 

教育や保育に携わる人材確保や資質の向上のためには、「長く働ける職場」である必要があります。そこで、経験年数や賃金改善、キャリアアップの取組みを行うことが要件とされました。

 

処遇改善加算Ⅰ・Ⅱの違いとは

処遇改善加算にはⅠ・Ⅱがあり、それぞれ要件を満たした場合に補助金が支給されます。

 

・処遇改善加算Ⅰ

職員の平均経験年数によって加算率が上がる制度で、8~19%の加算が支給されます。そのうち6~7%は、賃金改善要件(賃金改善計画書の作成や実績報告書の提出など)をクリアした場合に支給されます。

 

「平均経験(勤続)年数」は保育園の常勤職員一人あたりの経験年数の平均を指します。正規職員だけでなく条件を満たした非正規職員も対象です。また、職員が以下の施設での勤務経験がある場合はその年数を合算できます。

 

・教育・保育施設、地域型保育事業所

・幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学、高等専門学校、専修学校

・社会福祉事業を行う施設・事業所

・児童相談所における児童を一時保護する施設

・認可外保育施設

・病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、助産所(保健師、看護師又は准看護師に限る)

 

・処遇改善加算Ⅱ

保育園では役職が少なく、経験を積んでも昇給できないことから離職してしまう場合がありました。これに対し、国は新たに副主任、専門リーダー、職務分野別リーダー、若手リーダー等の役職を設けました。役職それぞれに必要な研修を修了することで副主任、専門リーダーは月最大4万円、職務分野別リーダーは月最大5,000円の加算を支給します。

 

月額4万円の処遇改善対象者となる副主任保育士の条件は、経験年数が約7年以上、4分野以上の研修を修了していることです。主幹クラスになるには平均19年の経験年数が必要とされていたので、副主任保育士は20代後半の保育士がめざせる役職として現実的な条件といえるのではないでしょうか。

 

また、月額5,000円の加算対象となる職務分野別リーダー・若手リーダーとなるには、経験年数が約3年以上、担当分野の研修を修了していることです。4年目の目標としてイメージしやすいステップだといえます。

 

保育士自身が法改正に関心をもとう

注意したいのは、国から支給された補助金の分配方法は保育園に一任されている点です。職員への配分は対象者への満額支給が条件とはなっておらず、法人内での裁量で実際の配分を決めることができます。

 

補助金が本来の目的である保育士への給料アップに使われていないという調査結果もあり、現在では、補助金を賃金改善に使用した報告書を各都道府県へ提出することが義務付けられています。

 

保育士に対する処遇改善手当は、対象外の職員に対する賃金改善への充当も可能(令和6年度まで。加算額の20%以内)であったり、申請に関する重い事務負担など課題もありますが確実に待遇改善・キャリアアップにつながる制度だといえます。保育士のみなさんは自分がどれくらいの処遇改善手当をもらえる可能性あるのか一度、ぜひ確認してみてください。

 

令和7年度に向け、処遇改善手当の一本化が検討されています。保育士自身のキャリアや安定した働き方につながる法改正について、しっかりと理解を深めておきましょう。


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